Ⅰ

49/74
前へ
/632ページ
次へ
文雄が荒々しい息を吐く。 が、ジュリは彼の方を見るでもなく続けた。 「恵美ちゃんに初めて会った時も、やっぱりフミは相変わらずで。 私のことなんか興味ないって感じで、他の女の子ばっかり追いかけてて。 私も、もう、どうでもよくなってた」 ジュリの寂しげな横顔を眺めながら、恵美は彼女と会った時のことを思い出していた。 確かにジュリは文雄のことを悪く言っていた。 その言葉は、今と大して変わらないはずだ。 それでも。 「恵美ちゃんを大事にしてるカズくんを見てたら……羨ましくなっちゃってさ。 私も、こんなふうにカズくんに好きになってもらえたら良いのにって、思わずにはいられなかった」 ジュリの言葉に、どこか違和感を感じて。 恵美は、考える前に、ついつい思ったままを口にしてしまっていた。
/632ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3303人が本棚に入れています
本棚に追加