Ⅰ

53/74
前へ
/632ページ
次へ
恥ずかしそうに笑ったジュリは、とても可愛らしかった。 いつもの強気な態度の彼女とは、また違った魅力が、そこにはあって、目が離せなくなる。 「でも、そんなこと期待しても、ダメなんだよね。 浮気されてても、結局は私のところに帰ってくるんだって……勝手に信じてさ。逃げたら負けだって思ってたけど。 これ以上、変な意地を張って待ってても、どうしようもないみたいだし」 文雄が、いつになく元気のない表情でジュリを見つめている。 話がおかしな方向へ展開していくのを止めようともせずに、苛々と膝を揺らしていた。 が、 「もう、今さらだけどさ。 別れよっか。 いつまでもズルズルつき合ってても……良いことなんてないしね」 ジュリの言葉を聞くと、ピタリと揺れは止まって。 代わりに、怒りを隠そうともしない文雄の声が響きわたった。
/632ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3303人が本棚に入れています
本棚に追加