Ⅰ

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そんなに可愛らしい表情をされてしまえば、ジュリも何も言えなくなってしまったのだろう。 「本当に?」 と、不安と期待の入り混じったような複雑な顔をしてみせる。 その正面で文雄はなぜか自身に満ち溢れた笑顔のまま、まっすぐに彼女を見つめたまま視線を逸らさない。 「本当だって。つーか、こんなこと言ってたら……なんかプロポーズみたいだな」 「な、なに言ってんのよ」 「いや。まあ、それでも良いんだけどね」 と、やけに真剣な表情で言われれば、ジュリならずとも女性ならば、顔を赤らめてしまうのも仕方のないことだったろう。 しかし、顔を真っ赤にして慌てふためくジュリから顔を背けた文雄は、今度は恵美に視線を落として言ったのである。 「それに……もう、俺が頑張っても恵美は手に入らなそうだしなあ。 弱ってる時なんて、あっさり口説き落とせると思ってたのに。 意外と、しぶといんだから」 褒められているのか、けなされているのか。 判断のつかない言葉に、恵美は曖昧に頷いただけだった。 すると文雄は、面白そうにちょと笑ってから 「さーてとっ。ジュリ、じゃあ行きますかあ」 さっさと席を立つと、ジュリの腕を持ち上げて腰を上げさせた。
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