3303人が本棚に入れています
本棚に追加
「行くって、どこに?」
「俺の家でもいいし、お前の家でもいいけど。
どっちがいい?」
「どっちって……私の部屋、今汚いし。
それに、フミの家に行くなんて言ってないでしょ」
「いいじゃん、仲直りできたんだしさあ。ラブラブしようぜ?」
と言われてしまえば、ジュリも文句の言葉も出なくなる。
さすがに長く付き合っているだけあって、ジュリの性格をよく飲み込んでいるんだな、なんて恵美などは感心しながら、ぼんやりと眺めてしまっていたのだけれど。
話しが纏まって、背を向けかけた文雄が急に振り向くなり口にした言葉を聞いて、ようやく我に返ったのである。
「さっきの話だけどさ。
恵美は、確かに意外と手ごわかったけど。
カズはどうかなあ。
『もう、きっぱりとジュリさんのことは諦めてください』って、お願いしといたほうが良いんじゃない?」
「……え?」
「じゃーね」
言うだけ言って、さっさと自動ドアの向こう側に姿を消してしまった文雄。
そして彼に引きずられるようにして連れて行かれたジュリ。
彼女は、咎めるように彼の名を呼んでいたようだったが、すぐに彼女の声も消えてしまって。
あとに残されたのは、すっかり青ざめた恵美と黙りこくった和成、そしてこれ以上ないと思うほど重苦しい空気ばかりだった。
最初のコメントを投稿しよう!