Ⅰ

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「行くって、どこに?」 「俺の家でもいいし、お前の家でもいいけど。 どっちがいい?」 「どっちって……私の部屋、今汚いし。 それに、フミの家に行くなんて言ってないでしょ」 「いいじゃん、仲直りできたんだしさあ。ラブラブしようぜ?」 と言われてしまえば、ジュリも文句の言葉も出なくなる。 さすがに長く付き合っているだけあって、ジュリの性格をよく飲み込んでいるんだな、なんて恵美などは感心しながら、ぼんやりと眺めてしまっていたのだけれど。 話しが纏まって、背を向けかけた文雄が急に振り向くなり口にした言葉を聞いて、ようやく我に返ったのである。 「さっきの話だけどさ。 恵美は、確かに意外と手ごわかったけど。 カズはどうかなあ。 『もう、きっぱりとジュリさんのことは諦めてください』って、お願いしといたほうが良いんじゃない?」 「……え?」 「じゃーね」 言うだけ言って、さっさと自動ドアの向こう側に姿を消してしまった文雄。 そして彼に引きずられるようにして連れて行かれたジュリ。 彼女は、咎めるように彼の名を呼んでいたようだったが、すぐに彼女の声も消えてしまって。 あとに残されたのは、すっかり青ざめた恵美と黙りこくった和成、そしてこれ以上ないと思うほど重苦しい空気ばかりだった。
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