Ⅰ

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恵美が抗議の声を上げると、彼もようやく安心したらしい。 「いや……だって。言っただろ?大事にするって」 と、しばらくブツブツと言っていたが、 「よしっ。じゃあ行くか」 急にいつもの意地悪な笑顔を取り戻した。 「行くって……」 「俺の家」 「あ、はい……」 ついさっきまでとは、全く違う緊張感に包まれる恵美の手をグイと引いて、和成は立ち上がる。 恵美もそれに逆らうことなく、今日ばかりは素直に立ち上がった。 「お、今日は抵抗しないんだ」 和成もこれには上機嫌である。 「しませんよ。今日は、ずっと先輩と一緒にいたい気分なんです」 「まーた、そんな事言って。本当に恵美は俺が大好きだからなあ」
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