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「…それでは、お包み致しますので、店の品など眺めながら、しばらくお待ち下さい。」
…そう言って、店主は黒い箱を抱えて店の奥に消えた。
「…ヨフへのプレゼントを懐中時計になさるのですか?」
「…あの、さ。あの、懐中時計。ヨフの親父の形見なんだよね。」
「…え?」
「彼奴等、食うのに困って…この店に…。」
「…さようでしたか。」
「……ここの店主が、いい人でさぁ。いつ、二人が買い戻しに来てもいいようにって、取って置いててくれてたんだ。」
そう言って微笑む主は、本当に嬉しそうだ。
「俺がこうして買い戻せるのは、店主のおかげ。」
そう言って、笑った主は…
これから実行する、ヨフへのサプライズに胸を弾ませていた。
「…それにしてもさぁ。色々あるもんだな。」
…窓側に並べられたステンドグラスのランプ。棚のガラスの中に並べられた古いけれど、細やかなつくりの時計や食器、ビスクドール達。
ガラステーブルの中に置かれた繊細なつくりのネックレスやブレスレット。
一番奥の鍵つきの棚に置かれた、ルビーやサファイアなどの宝石が散りばめられた指輪やピアス。
皇子は、手前のネックレスを手に取り、ぼーっと眺めている。
「…可愛らしいネックレスですね。」
「ばっ!…ただ、見てただけだっ!……お…俺は、ちょっと…店主の様子を見てくる。」
そう言って、品物を少し乱暴に戻すと…
主は、店の奥に消えた。
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