ビリ天使

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小学校の頃。 走るのがいつも遅かったので短距離走とか リレーとかが大嫌いでした。 一緒にスタートしたのに 何秒か後には全員の背中が見える。 ぐんぐん引き離されて 地面を蹴ってる自分の足音だけがやたら聞こえてくる…。 「なんで走らないといけないんだろう」という気持ちになってきていつもゴールした後に大泣きしてました。 けれど、 ある時いつものように ビリで走っていると 急に周りがスローモーションのようになって 風景がさあっとクリアーになった。 そして、 諦めてるのか何なのか 自分の気持ちまでどんどん冷静になってゆく感覚に気がつきました。 自分一人一人が取り残されるという感覚は「自分」が ぎゅうーっとされてくる感覚に似ています。 私はその瞬間競走している自分ではなくて ただただ「走ってるだけの自分」になった。 ビリにだけついてくる このおまけの感覚は 楽天的なものには ビリの優越感に変わったりもします。 (全員の背中を見られるのもビリだけ) この魔法をかけてくれたのはビリの天使ではないかと思っている私です。 ですが、 中学に入ってからの私は 2年連続で1位を取り ビリ天使はどっかにいってしまいました。
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