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私の知っている「あこがれ天使」は鯨にそっくりの姿をしています。
羽もないのに風船みたいに空を飛んで「夢」を食べる
バクみたいに人間の「あこがれ」を食べてぷくぷく太っています。
このくじら天使は
なにか特別なことをするわけではなくて
ただただどこかにいて
誰かのあこがれを見ていてそして食べるのです。
「あこがれ」は食べられたり見つめられたりする必要があるから。
私は失恋したとき
このくじらに出会いました。
あこがれて何度も何度も出そうと思って出しそびれた手紙や渡しそびれたお守り……
宝物みたいなことだから
誰にも話したりしてないのに「知ってるさ」
そのくじらは小さいビー玉みたいな目玉で言いました。
あこがれは地球上に沢山あるそうです。
いつか撮りたい映画。
いつか行こうと決めてる
地平線と平べったい空の国。
いつかなりたい何かのこと。
いつか話したい誰かのこと。
あこがれくじらは
ただただ見ているだけなのだけれど
どんな小さいあこがれでも…
どんな悲しいあこがれでも…
全部見ている天使なのだそうです。
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