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にっこり微笑んで私の話を聞いてくれる詞音さん。私に友達がいないと知ったとき、どんな表情を浮かべるのだろうか。それよりも、"私"のことを知ったら、話すらしてくれなくなるのでは。
徐々に開きかけている自分の心の扉。あと少しで開きそうになるのに、閉じているのはいつも自分自身。その人を信じ、裏切られたらと思うと怖くなり、閉じてしまう。心から信じられたら、どれだけ楽なのだろうか。
「花澄ちゃん?」
「あ、すみません」あいづちをうつのを忘れてしまっていた。私は笑顔で謝った。詞音さんは心配そうな顔をした。
「花澄ちゃん、今すごく悲しそうな表情をしていたよ?」
「え?」意識していなかったせいかもしれない。
「何か悩み事でもあるの?」ふと、私は詞音さんの目を見つめた。
まっすぐで真っ黒な綺麗なひとみ。この目でも私を裏切ることもあるのかな。
「なんでもないです」私は苦笑いをしながら答えた。さらに詞音さんが追求しようとしたとき、白川さんが助け舟を出してくれた。
「ほら、仕事に戻る」納得していない表情で詞音さんは奥の部屋に戻っていった。
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