愚者のモノローグ

2/3
前へ
/26ページ
次へ
 死人に梔(くちなし)を。甘い香りと錆びた臭いが棺桶の少女達を包容する。白い花弁は血に濡れた血の気のない彼女へ贈る言葉なのだろうか。  浴槽を棺桶に見立て横たわる少女は出来すぎた人形のように美しい。同性でも憧れる形のいい乳房、見た目を損なわぬくびれ、細く伸びた脚。  町中に居れば思わず振り返ってしまうほどの完璧さだ。ただ、首の切断痕さえ無ければの話だが。  首の切断面から血という不粋なモノは流出しておらず、惜しげもなくその誰にも触れられたことのない桃色の断面をさらけ出している。  そんな、切り離された苦痛を知らず微笑み眠る少女の首の近くには、少女の苦しみを全て引き受け激痛に歪んだ別の少女の首。  未だに鮮血を撒き散らし、棺桶に敷き詰めた白い花弁を赤く汚す肉袋のそれは赤く濡れた男に拾い上げられ、そのまま白い大きな袋に放り込まれた。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加