モノクロ

8/12

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
柊は少し赤みがかった茶色の髪をいじり、風で少しはねた前髪をなおす。 千良はそれを横目で見て、またふてくされたように視線を戻した。 「まぁまぁ、そんなに怒んないでよ」 千良が少々ふてくされているのに気がついたのか、柊は目を細めながら仕方ないだろうと言わんばかりの表情をする。 「別にぃ…。」 岸本柊。この自分の隣の席に座っているこの男、千良からしてみれば不思議で仕方なかった。どこまで天然なのか分からないが、誰にでも声をかける。彼にしてみれば「困ってる人を助けるのは当然のこと」だそうだが、千良からしてみればただのおせっかいでしかない。しかし、そのおせっかいは嫌な感じはしなく、何故か周りもその彼のおせっかいに巻き込まれ、最終、お礼まで言われる事が度々だった。 そして今日もまたそのおせっかいに巻き込まれ、千良はバスに乗っている。 「なんだかなぁ…。」 この呟きにも何が??と律儀に返す彼に千良は彼の顔をじっと見て、ため息をついたあと、 「いやなんでも。」 と、続けた。
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加