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柊は少し赤みがかった茶色の髪をいじり、風で少しはねた前髪をなおす。
千良はそれを横目で見て、またふてくされたように視線を戻した。
「まぁまぁ、そんなに怒んないでよ」
千良が少々ふてくされているのに気がついたのか、柊は目を細めながら仕方ないだろうと言わんばかりの表情をする。
「別にぃ…。」
岸本柊。この自分の隣の席に座っているこの男、千良からしてみれば不思議で仕方なかった。どこまで天然なのか分からないが、誰にでも声をかける。彼にしてみれば「困ってる人を助けるのは当然のこと」だそうだが、千良からしてみればただのおせっかいでしかない。しかし、そのおせっかいは嫌な感じはしなく、何故か周りもその彼のおせっかいに巻き込まれ、最終、お礼まで言われる事が度々だった。
そして今日もまたそのおせっかいに巻き込まれ、千良はバスに乗っている。
「なんだかなぁ…。」
この呟きにも何が??と律儀に返す彼に千良は彼の顔をじっと見て、ため息をついたあと、
「いやなんでも。」
と、続けた。
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