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snow's story
白い風が吹く夜に、彼に出会った。
彼が何者でもよかった。
話し相手になってくれるだけでよかった。
毎晩、彼は私の部屋へ来た。
窓際に腰掛け、優しい笑みを浮かべて、私の話をいつまでも聞いていてくれた。
そんな時間が、何よりも好きだった。
* * *
―――December
規則正しい時計の音が、部屋に響く。
部屋の主である少女は、時計の針を眺めていた。
時が流れていることを、少女は改めて知った。
月明かりが、暗い部屋を照らす。
「こんばんわ」
澄んだ少年の声が部屋に響いた。
少女の顔が強張る。
「誰?」
「誰と言われると少し困るな。……名前はスノウっていうんだ」
少女の問いに笑いながら答える少年は、真っ白な髪をしていた。
「スノウ……。変わった名前ね。あなたは何処から来たの?」
少女は問う。
「……自分でもよく解らないや」
スノウは、薄青の瞳を細めて笑った。
「何よそれ。自分の事なのに解らないの?あなた何者?」
「解らないものは解らないよ。僕は、雪の精霊なんだ」
少女は溜め息を吐いた。
「あっそ。もういいわ。早く帰って頂戴」
「君と話がしたくて来たんだ。ねぇ、どうしていつも外に出ないんだい?」
「……病気だから」
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