偶然が重なる日

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おはよ、って言われても、 朝の挨拶を交わすような状況じゃないのは分かっていた。 愛子は派手に巻かれた髪を右手でくるくると弄びながら、薄く笑みを浮かべた。 面白い事なんて、なにも起きていないのに。 「ねぇ、佐倉さん。わたし昨日ありえない噂を聞いたんだけど…知りたい?」 「………」 知りたい? なんて、馬鹿げた質問だ。 嫌味ったらしい言い方。 何を答えたら正解なのか。 そもそも何を言ったとしても愛子の怒りはおさまらない。 口を開いたら、頬を思い切りぶたれるか それとも、想像もつかないようなひどい言葉で罵られるのか。 二つに一つ。いや、両方かもしれない。 怒り狂うこの人が、リアルに想像出来る。 「あたし、美和のこと、友達だと思ってたのに」 「………」 今度は、わたしが笑いそうだった。 トモダチだなんて、…………よく言う。 影でわたしを罵って、くだらない嫌がらせをしてきたくせに。
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