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はぁ、と溜め息をついて言う。
「『俺の』なんて言ってるの森川さんに聞かれたらまたなんか言われちゃうよ」
「フン、誰に何を言われようと俺はお前が好きだ。その気持ちは変わらない。たとえ許婚がいたとしても。何が悪い」
森川さんは会社のお得意様の嫡男で、十歳年上の私の許婚だ。
あまりお互いの事を知らないし、嫌いではないがどこか人を見下しているところがあって苦手だ。
好きだと直接言われて顔が赤くなっているのを自覚しつつ、たまらなくなって顔をふせた。
「『好きだ』って言うのと、『俺の』って言うのとでは意味が違うよ」
「そんなの俺にとっては大して変わらない。・・・っていうか人と話してる時はちゃんと相手の目を見ろ」
そう言って強引に前を向かせる。――と。
「うっ」
なんだよ。顔を赤くほてらせてからの上目遣い。しかも若干目が潤んでるし。
反則じゃないか――!
顔を上げさせておいて自分は突っ伏した拓也を怪訝に思っていると。
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