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「やっぱり御祖父様の遺言といえども、好きでもない人と結婚させるのはかわいそうよね」
フーと溜め息をつき、日和の母、水沢美智流はつぶやいた。
御祖父様の遺言というのは、先々代の水沢カンパニー社長、水沢辰眞が、取引相手の森川グループの当時の社長と仲が良かった為、お互いの家から年の近い男女が生まれた場合に結婚させるというものだった。
日和の一代前までは両家共に男しか生まれなかったため、十歳の年の差はあるものの、水沢家からは日和が。森川家からは嫡男の森川爽佐が、先代の約定を果たすために結婚することとなったのである。
何かいい解決策はないかしらと考えながら、美智流はダイニングへと歩いていった。
先ほどは何も知らないように振る舞ってはいたが、ついつい立ち聞きしてしまったのは内緒だ。
あの子達が幸せに暮らせるようお母さんも頑張らないとね!
改めて我が子の幸せを願った母親は、親に責任を放棄されてしまった子供達に愛情を届けるべくいつも以上ににこやかな笑顔を湛えるのであった。
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