一日の始まり

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 私の一日は、寝起きの悪い隣人拓也(たくや)を起こすことから始まる。 「いってらっしゃいませ、お嬢様」 「いってきます」   家を出てすぐ右隣りにある一軒家が拓也の家だ。   彼は六人兄弟の長男で、小さい頃からの知り合いだ。   私達は同級生で、同じ高校に通っている。  彼の家庭は複雑で両親は今家にはいない。だから一人で年下の兄弟達の面倒を見ている。  そういう訳で、手伝いも兼ねて私は毎朝彼の住む篠原家へと足を運ぶのである。  インターホンを鳴らすと、中からドタドタと複数の足音が聞こえてきた。  勢いよく開いた玄関のドアからは、五人の子供が顔をのぞかせた。  彼らはこっちを見るやいなや一斉に声をあげた。 「おはよう、日和(ひより)お姉ちゃん!」 「おはよう、お姉ちゃん!」 「おはよう、日和!」 「おはよう、大賀(たいが)君、のんちゃん、(かい)君、美帆(みほ)ちゃん、奈穂(なほ)ちゃん!」
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