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それから数分後――。
「そんなにむくれんなって。ひよこがよりひよこっぽくなるだけだぞ」
となりにはご機嫌な拓也。
対する私は二つの理由によりふて腐れている。
あのあといったい何が起こったかというと……。
拓也ごと毛布を引っ張るまでは良かったのだが、自分よりも大きい男子高校生を引きずり落とすには無理があったのだ。
「そうだよ、重さを考えてなかった。馬鹿だ……」
無事気取られることなく毛布を掴むことに成功した私は、やっとこの時が来たとでも言わんばかりに意気込んでいた。
そして勢い込んで毛布を引っ張った。
「!」
全力で引っ張るがびくともしない。
「うそ!」
思わぬ事態に呆然としていると、いきなりグイっと引っ張り返された。
急な反撃に太刀打ちできず、こけそうになった時――。
「捕まえた。お前か、俺の睡眠を邪魔したのは」
すぐ目の前には不敵な笑みを浮かべる拓也がいた。
慌てて離れようとしたが身動きがとれない。
――私は拓也の腕の中にいた。
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