一日の始まり

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「何を勘違いしてるって?」 慌てふためく私を楽しそうに眺めながら拓也が言う。 「もう!拓也が変な言い方するから大賀君達なんか勘違いしてるじゃない!」 「変な言い方?俺は事実を言っただけだけど」 確かに。 私の父は財閥の社長で、幼い頃私がイジメられていたのを助けてくれた拓也をたいそう気に入っている。 長年の付き合いで彼の家庭環境を知っている父は、彼をアルバイトという形で雇っているのだ。 拓也は頭が良いから、父はとても頼りにしている。 というかむしろすがっている。 最近は経営方針の相談までしているようだ。 それで昨日も遅くまでうちに引き留めていたのだろう。それは紛れも無い事実だ。 しかし、ものには言い方というものがあるだろう。 私の過剰な反応も悪かったと思う。 でも、ああいう風に抱きしめられて耳元で言われては、誰だって反応するし、誰だって勘違いするというものだ。 そこら辺を分かってもらいたいと心の底から思う。
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