枯れ時 時雨のさざめ退き

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「カリア アスド――――」  古代語と呼ばれるものを用いた詠唱文。  己(おれ)には言葉そのものの意味は分からないが、契約文の意味は漠然と理解できる。 『隣に立ち、よき友であり、よき理解者であり、よきパートナーとして、その命尽きるまで共に歩むことをここに誓う』  そんな一文。  ……さて、結びの句か。 「――――イナリ・フシミノ ライラシア・リ・フォン・ネフェルペンタディア」  二人の名である。  何とも気の抜ける終わり方であるが、まあいい。  面白いものを見せてもらった。 「稲荷」 「おう」  自分で腕を傷つけ、そこから血を足元の陣に落とす。  見れば、ライラシアも同じようなことをしていた。  陣が二人の血液を吸い込み一際大きな光を放ったかと思うと、次の瞬間に陣は霞むように消えてしまった。 「契約完了、かね」 「ええ、そのはずよ」  ふむ、何らかの繋がりができるという話だったが、確かに何かが繋がったような感じがする。  まあ、今はただ繋がっていることが分かるだけで何があるわけでもないが。  こうして、己(おれ)達は使い魔の契約を無事交わしたのだった。
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