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ライラシア達は学園を卒業した。これで王立魔法学園ともおさらばである。
元気でいろよ、コダセン。頭を大事にな。
別れを惜しむように涙を流す卒業生や在校生達を眺めたのも、今は五日ほど前の事。
現在己(おれ)は、ライラシア、オル坊、ミドリムシ、他数名と共に純白の箱馬車に乗っていた。
ライラシア達の帰郷である。
この馬車はライラシアの家が持ちだしたものであり、馬六頭引きの大型故にそれなりの人数が乗っても空間は余っていた。
さて、ライラシアの実家が出した馬車であるならばミドリムシがこの馬車に乗っているのもおかしいように感じるかもしれないが、実はミドリムシの家の領地はライラシアの家の領地と隣り合わせらしい。個人個人の交友も深いため、同じ馬車に乗ることを許されているんだそうだ。
というより、この両家は親の代もその親の代もそれぞれ仲がいいため、家族ぐるみの付き合いと言ってよい関係らしい。
そして、ライラシア、オル坊、ミドリムシを除く他数名とは、
「あ~、いいわね~。イナリちゃんフカフカ」
「お母様、稲荷は私の使い魔ですよ。取らないで下さい」
ライラシアの母も含む。
ライラシアの卒業式に参加していた貴族の中にはライラシアの母君もいたようで、今の己(おれ)ぁ母君に抱えられている訳だ。
どうしてこうなった。どうしてもこうなった。なんてこったい。
彼女の容姿はライラシアやオル坊とよく似た金髪碧眼。
ライラシアよりは少し目じりの下がった優しげな顔つきであり、のんびりとした雰囲気が周囲を和ませる美女である。
が、ライラシアと己(おれ)を取り合うのはやめてくれーい。
……心の中の己(おれ)の叫びが届くはずもなし。されるがままになる。
血は争えんということか。困ったもんだぜ。
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