ふぁんたじー入りしちまったぜ

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 カランカランと下駄鳴らし  宙舞う木々の葉避けながら  まったり気ままに道を往く  そんな狐がおりました。  まあ、己(おれ)だった。  ん、狐が何故下駄をって?  無粋な質問はしちゃいけねえよ。下駄を履いてるからに決まっとろーが。  今の己(おれ)ぁ人間にしか見えないんだぜぃ。化かしは狐の十八番(じゅうはちばん)、ってな。  つまるところ、己(おれ)ぁ化け狐ってヤツなのである。  人を化かすは狐の仕業。狸なんぞと一緒にするな。化かしに於いちゃあ負けねえよ。  なんせ己(おれ)様九尾の狐。そこらの狐とも一線画する大妖怪なわけでして。  こうして人型を取ってるのはこれまた化かしの一環でな。  旅の途中で立ち寄った民家に転がり込んでいくにゃあ狐の姿じゃダメなのである。当然だが。  言葉を話す狐がいればそれは間違いなく妖怪であるからして、泊めてくれと頭を下げても追い出されること間違いなし。  さてさて、今日はどちらへ向かいましょうかね。  藍の着流し身に纏い、黒の一振り携えて、ぶらりぶらぶら一人旅。  今日も気分で道を決め、その場凌ぎで先を往く。  なにせ己(おれ)様大妖怪。危険の危の字もありやせん。何処へ行こうと自由さね。  大妖怪だってことを自慢できるようなダチなんぞ殆ど居ないがな。  大妖怪のダチどもは血の気が多い連中ばかりで自慢するもしないも関係なしに襲ってくるし、木端妖怪じゃあ最初から畏まってやがるのよ。  人間に自慢なんぞした日にゃあ、間違いなく退魔師呼ばれて仲たがい。友達なんぞにゃなれそにねーや。  さて。  そうしてフラフラ化け狐。  山道吹く風、北の風。肌突く冷たいこの風も、妖術使えばなんのその。  木枯らしだろうがなんだろーが、正にどこ吹く風と云う訳だ。まあ、妖術使わなくともこのぐらいなら何てことないがね。
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