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「結構時間が早いがどこに行くんだね?」
「食堂よ。私とあなたの朝食。本来使い魔は使い魔専用の餌があるのだけれど、あなたは人間だものね。昨日のうちにあなたの分の食事も用意するよう頼んでおいたのよ」
「おお、ありがてえ事だ」
実は己(おれ)は飯を食わなくても生きていける。けどまあ、食えるなら食いたい。飯ってのは己(おれ)としても結構楽しみなものなんでね。
男子寮を出てそのまま外を進んでいく。己(おれ)が寝ていた物置は一階の出入り口すぐそばにあるので、寮内から外まではすぐだった。
「まあ、貴族が多いこの学園、生徒でもないあなたに対する食事は私たち生徒と比べると貧相なものになるでしょうけど」
「そりゃまあ、そうだろうな」
そのぐらいは予想済みである。
むしろ己(おれ)の待遇が思った以上に良いことに驚いている。今の所ライラシアにとって己(おれ)は単なる負担でしかないはずだ。
「そういえば、あなたって元の場所ではどんな立場だったの?」
「あー、まあ言うなれば、旅人、ってところか」
「ふうん、冒険者みたいなものかしらね」
「冒険者?」
「ええ。有体に言えば様々な場所に行きながら依頼を受けたり魔物を倒したりして日銭を稼ぐ者達のことよ。殆どの人が根無し草ね。人によっては自分の冒険心を満たすために遺跡に入り込んだりしているみたい」
「ほほう、そりゃ面白そうだ」
「やっぱり同じような人種ね」
なんかライラシアが呆れたようにこっちを見てるんだが。
解せぬ。
「んで、魔物ってのは?」
「あら、あなたのいた所にはいなかったの? いきなり人間に襲いかかってくる化け物たちのことよ」
「あー、いたにゃあいたな」
低級妖怪は大体そんな感じだ。
……にしても、ふうむ、魔物ねえ。妖怪とどっちが強いのかね。ライラシアの話によると、昨日召喚されていた使い魔たちの大部分はその魔物らしい。
つくづく使い魔召喚と契約は謎の多いものである。本来襲ってくる筈の生き物が従順な態度で呼び出されるとか意味が分からん。こっちにいる人間はそれが当然だと思ってるらしく疑問にすら思っていないが。
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