2317人が本棚に入れています
本棚に追加
己(おれ)が寝泊まりした物置のある男子寮も、ライラシアの部屋がある女子寮も、さっきの食堂も、当然校舎も、その全てはこの王立魔法学園の敷地内のものらしい。
昨日己(おれ)が使い魔として召喚されたあのドデカい建物もな。あそこは使い魔召喚以外にも戦闘系授業の実技や模擬戦なんかで頻繁に使用されているんだそうだ。
で、現在己(おれ)達は席がすり鉢状に並んでいる教室にいる。
かなり上段めな席の横長な椅子に座ったライラシア。その隣に再び己(おれ)。そして……
「おーい、フッシーやーい」
己(おれ)の肩をガッタガタ揺らしてくる変な女子が一人。
一体どうしてこうなった。
髪の色が緑なので、これからはミドリムシと呼ぼうと思う。
「なんでいミドリムシや」
「呼び方ひっど!?」
なにやら愕然としている。
「もー、さっき私ちゃんと名乗ったよね、よーね」
「…………」
「目を逸らすなよー」
己(おれ)の首をグイグイ自分の方へ向けようとするミドリムシ。なんとも強引な奴である。ミドリムシの新たな生態を、己(おれ)は知った。
「ねーライラー。ライラの使い魔君が酷いんだけどー」
「まあ契約してないから正確には使い魔ではないのだけれど、ごめんなさいね、うちのが」
「よし、許す!」
なんか偉そうに胸を張っているミドリムシ。しかし哀しいかな、そこには何もないのである。具体的に言うなら脂肪の塊的な何かが。ライラシアとは格が違った。
「なにやら良からぬ電波を感じたんだけど、フッシーじゃーないよね、よーね?」
目が笑ってませんぜミドリムシさんや。
きっと今怪電波を受け取ったのはその頭頂部に映えてる一本の触覚なんだろうな。
動くたびにピコピコ左右に揺れるんで、ついつい掴みたくなる。
で、コイツだが、さっきライラシアと一緒に教室に入った瞬間己(おれ)達に突撃してきやがった女で、ライラシアの友人らしい。
確か名前は、あー…………み、ミドリ・ムシ子、だっけ?
「ミルドレア・レ・フォン・ムードスリングだから! 途中から声に出てからね、フッシー」
「やっぱりミドリムシじゃねーか」
「違うってば!」
ミドリムシの方が覚えやすので、以後これで行こうと思う。
最初のコメントを投稿しよう!