2317人が本棚に入れています
本棚に追加
「とりあえずその姿で人里行くのはナシだ。翼隠すだけなら確かお前さん大分前から出来たよな? 今はそれでいいだろうに」
「うえーい」
何とも残念そうな天狗であった。
いや、こちらとしても断腸の思いで言ってやっているのである。馬鹿な夢を諦めさせてやるのも友人の仕事の一つなもので。俺の優しさに泣くがいい、鳥野郎。
すごすごと元の姿に戻ってから翼だけを隠し始める天狗。後は面をはぎ取れば人化完了である。
実は、天狗の鼻が長いという話は天狗達が鼻の長い面を好むから生まれたのものであり、面を外せば天狗たちは単なる羽の生えた人間であった。面の鼻の長さを競って天狗たちはよく争っている。
一応天狗の長であるこのアホ天狗が被る面は、鼻の長さが天狗たちの中で一番らしい。前回この変態に会った時には非常にしつこくそのことを自慢してきた。まあ、余りのしつこさと五月蠅さに耐えかねて尻尾を九本全て解放した己(おれ)の手によって、その後変態天狗がどうなったかは推して知るべし。
最初のコメントを投稿しよう!