美月の去った後

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「…ずるうござります…こんな時ばかり地位を利用なさるとは…」 「何とでも言え。嫌なものは嫌だ」 「美月が出掛けたら俺も城下へ行く」 「…いつまでも姉上を追いかけなられるのは止められたら如何です…」 「姉弟は夫婦にはなれぬと美月姉上が申されておられたではありませんか……」 「ふふふ…姉弟が夫婦になれぬだと誰が決めた」 「日ノ本の神話には、創世の神の兄妹が夫婦になり、様々なお子の神々を産んだという…」 「こんな例があるのなら姉弟が夫婦になれぬはずはなかろう」 「……………」 何の話を持ち出してお出でか…呆れる… 「姉弟で夫婦とは…汚らわしい」 「織田のお家に傷が付きまする」 「頭が可笑しいですぞ信長兄上」 一刀両断の如く二人の間から上を見上げてお市が言ってのけた。 「…頭が可笑しいだと…」 怒った信長はそんなお市を見下ろして呟いて睨む。 「…私は…信勝兄上がお心の中で思われて居られると思い、代わりに申したのです」 「怒られるのであれば私ではなく、信勝兄上にお怒りを向けられませ」 にっこりと笑みを浮かべてお市は、怒りを信勝に向けてくれと信長に言うのだった。
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