1-1彼女の場合

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私が30になった年、結婚4年目に入ってから、夫の仕事は忙しくなった。 一緒にご飯を食べることも、出かけることも、会話さえ減ったように思う。 夫はいつでも私に明るく、優しかったけど、それは私だけの特別じゃないって、わかってる。 今日はどこの誰と笑ってるのか、最初はとても寂しくて、体が震えるときもあった。でも今はこの独りになれていっている。 いつかこの封筒の中に、札束と一緒に離婚届が入ってるんじゃないかって思うと怖い。 夫の私への愛情なんか、毎年この札束の数と反比例し続けているのだから。
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