1-2彼の場合

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クリスマスの街なかで左右をきょろきょろと見回す中年男というのは、はたから見てかなり異様だと思うし、できればしたくない。 しかし見つからないと帰りの電車にも乗れないという現実が待っている。 色んなところを見回していると、いやでもクリスマスな景色、人が目の前を横切ったり、すれ違っていく。 あ、昔あれの古いタイプ、娘に買ってやったなと百貨店のショーウィンドウの中の人気マスコットがサンタの衣装を着たぬいぐるみを見て思った。 「パパ!あたしあれがいい!」 「お、そうか。わかった。買いに入ろう」 「でもあんな大きいの高いんじゃないの?」 「いいんだ。今年一年、いい子にしていたもんな」 「わーいやった!」 私の横で、ショーウィンドウで微笑むマスコットに輝く視線を送る女の子とその両親が百貨店の中へと入って行った。 女の子が両の手を若い両親とつないで、元気よくぶんぶんと振りながら歩いていく姿は昔の私たち家族にだぶる。 娘にもあんな時期があった。しかし娘があれくらいのころに妻は病で先立ってしまった。 長いこと、娘に寂しい思いをさせないように、つなげなくなったもう片方の手の分を埋めようと、頑張ったつもりだが、もうお役御免ということかな。 いやしかし、財布を探さなければ本も子も―― 「どうかされましたかな」
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