6人が本棚に入れています
本棚に追加
寂しさを消すおまじないだと言って
私の手を握り締めたあなた
滅びつつあるこの世界を救おうというらしい
そして私を置いて荒野の中へ消えていった
一度は止めようとした
あなた一人では何も変えられないと
本当はどこにも行かないでほしいだけ
だけどあなたはこう告げた
「誰かが道を開かなきゃならない
それがたまたま僕だっただけ」
どれだけ血を見ることになるか
世界はもうきっと治らない
あなたという小さな生命が失われても
きっと誰も気づかないのに
もうあなたは旅立ったあとだった
死に場所を探すためだけのような旅へ
あなたがいないだけで部屋の中が冷たい
二人分のコップ 二人分のベッド
棄ててしまおうと思った だけど
明日になったら帰ってくる気がして そのまま
一日がとても長く感じた
世界は少しも変わらないままで
もう一度あなたに会いたくなった
私も世界を救う旅に出よう
そうすればいつかどこかで会える
荷造りを済ませドアを開け放つ
草木は枯れ果てていた
人々の心を映したような世界だ
子供たちが座っているのが見えた
痩せ細った体 私を見つめてる
持っていた水をみんなに飲ませた
きっと世界はここから変えられる
歩けば歩くほど世界は荒んで見えた
あなたが成し遂げようとしたこと
私には大きすぎたのかな
食料も尽きて立つことも出来なくなった
もう終わりでいいと思った
目の前に一人の少年が現れた
いつか水を与えた子供の一人だった
少年は私にこう告げた
「僕が意志を受け継ぎます」と
少年はそのまま荒野の中へ消えていった
その背中はまるであなたのよう
あなたの意志は今引き継がれた
きっと途切れることなく続く
世界はいつか潤いを取り戻し
みんなが笑って過ごせるよ
そして私はゆっくり目を閉じた
やっとあなたに会えるのかな
最初のコメントを投稿しよう!