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王様はこんな僕を作ってしまいました
今すぐにでも潰したい そんな失敗作です
でも きみは僕を抱いて走り出す
「ふたりだけの世界へ行こうよ」と…
錆びた鉄屑 寄せ集めただけの
この僕に名はない
幼稚な王様は 暇つぶしの玩具を と
僕を生み出した
だけど僕は無能な玩具だった
「あぁもう飽きた 飽き飽きだ
使えないガラクタは棄てておけ」
王様は召使いにそう言った
僕を拾い上げた召使い きみだった
王様の耳に届かない場所で
「私のために生きて」と囁く
王様はこんな僕を作ってしまいました
今すぐにでも潰したい そんな失敗作です
でも きみは僕を抱いて走り出す
「ふたりだけの世界へ行こうよ」と…
王様の目から逃れては
ふたりでいろんな話をした
きみはひとりが寂しいと言う
こんな暮らしはもう嫌だと言う
それならば僕が変えてみせよう
「ふたりだけの世界 見せてあげる」
真っ暗な夜 王様も寝静まった頃
僕らは脱走を試みた
冷酷な顔で行く手を阻む王様
気づかれていた
「命令に背く召使いなど斬り殺せ」
兵士たちはきみを捕らえた
そして深い深い地下の牢獄へ…
僕は隠れることしか出来なかった
きみの目は“助けて”と叫んでた
僕は無能な玩具だった
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