序章

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重いまぶたを開くと、そこには何もなかった。 闇。 ひたすらの、闇。 何もわからない。 何も見えない。 ただ、目が回るような、闇。 その時不意に、音が聞こえた。 扉を蹴るような音。 重々しいブーツの音。 声。 「ーーこわい。」 呟かれた、少し掠れて怯えたような声。 遠くからも聞こえる。 寄せては引く波のように、穏やかで、安心するような声。 苛立ったように、時々抑えきれずに音量を上げる、不快な声。 何かが、割れる音。 静寂。 そして。 ーー銃声。 その後は何も聞こえなくなった。 ただ、目の回るような闇に呑み込まれて。 ーー何も、わからなくなった。
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