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その森には、貴重な「宝物」がある
おそらく、この広い世界を探し回っても他に見つけることのできないきわめて珍しいものである
「我々にとっては、『宝物』でも、あなたがたにとっては全く価値のない珍しさかもしれんでしょう......」
しわがれた声で、老人が言う
森を代々守ってきた小さな村の長老である
年はすでに百を超えている
「しかし、一目見ればその美しさに目を射られ、その価値が分かることでしょうな......この中に、その価値が分かるものがいますかな?」
長老は、森の入口にかまえた小さな砦に集まった十数人の男たちを見回した。
男たちは、そろって首をかしげている
ただ一人の例外を除いて
村の人々の視線は、いっせいに、例外の少年にそそがれた
「坊主、そんなに小さいのに、よく参加したものだな。それで、見たことあるのか?」
村人の一人がその少年に尋ねる
少年は、かんたんな胴着に身を包み、頭にはターバンの様に布を巻いていた
「坊主じゃない......ルゥだ。これでも、女の子だよ、失礼な」
そう言って、頭に巻いていたものを手にかけてほどく
感嘆の声が響く
布をとると、そこには目を射られんばかりに黄金に輝く長い髪をたずさえた少女がいた
まだあどけない幼さが残るが、そこには匂いたつ美しさがあった
「お前、女ではないか? 本当に、よく参加したものだな......。遊びじゃないんだ、ケガをする前に帰ったほうがいい」
そう男が諭す
無理もない、これから起きる戦いに参加すれば命を落とす危険だってあるのだ
「人を見かけで判断しない方がいい。僕は“発現者“だ。少なくとも、ここにいる誰よりも強いと思うよ」
一瞬どよめきが起こる
「なるほど......それは、ありがたいこと。我々には、少しでも多くの力が必要ですので......。して、価値がわかるとな?」
長老は、発現者と聞き、うなづきながら尋ねる
「花のことだろ?毎年の様に見させてもらってるよ。あれは、本当に美しいものだ」
村人からまたも、どよめきがあがり、長老は嬉しそうに「ご存知でしたか」と笑う
一方、武具に身を固めた屈強な男たちは怪訝そうに顔を見合わせる
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