百年華

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「百年後でしょ。百年後にまたその花が咲くのを見るために、僕たちは戦う。違うかな?」 村人たちは、またどよめいた 長老は満足そうに大きくうなずいている そして、きょとんとしたままの他の傭兵たちに、長老は言う 「わしらは、この森に咲く百年華を代々守ってきた。この花は、不思議なことに咲くのにちょうど、百年かかる。今年その花が咲き誇るのを見ることができるのは、わしがまだ子供だった頃......百年も前の村の男たちのおかげじゃ。去年は、百一年前に守った花が咲き誇り、来年には、九十九年前に守った花がいっせいに咲き誇る。わしらは、ずっとそうやって、百年華と呼ばれる花が咲くこの森を守ってきたんじゃよ」 百年華──── それは、なんとも不思議な花である 咲くのに、百年かかり、それまではずっとつぼみのままである 咲き終わると、花は綿毛へと変わりその種子をとばす そして、また百年後に花を咲かせる 咲き誇る期間は、とても短いが、それまでの準備の時間が果てしなく時を費やす大変長寿な花である しかし、だからこそ、その花が咲き誇る姿は、この世で一番美しい花と言っても過言ではないほどに心奪われる景色になる そんな花々が咲き誇るのを少女が初めて見たのは、二百年も昔のことであった......
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