百年華

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「ねぇ、ルーク見てッ まるで、海の上を歩いているみたいだわ」 そう言って、金色に輝く髪をなびかせながら、少女は蒼い花々の上をかけていく 「そんなに、はしゃいでは危ないですよ、姫様......」 そう声をかけるのは、騎士装束に身をつつんだ青年である その青年の髪も、その花々と同じように蒼く澄んでいた 「なんて、キレイなの......無理を言って、お城を抜け出してきてよかったわ。ああ、なんて素晴らしいんでしょう。まるで、天国にいるみたい......決めたっ!わたしは、ここに住むわ」 少女は満面の笑みでニコリと言う 「姫様......あなたは、いずれこのウォルガーデン王国を背負うのです。それはさすがに、無理という話ですよ......」 青年は諭すように言う 「ルークったら、ほんとに意地悪......ここに住むのが無理なら、私は絶対に、毎年この花を身に来るわ。だって、こんなに、蒼く澄んだキレイな花は見たことがないもの」 「ええ、それでは、その時は私もお供しましょう。私もこの花々はとても気に入りました。ここにいるだけで、まるで心が洗われるようです」 そこには、幻想的な空間が広がっていた 果てしない蒼が広がり、その色は世界中のどんな青色よりも蒼く澄んでいた 少年と青年の二人は、しばらくその幸せな時間を楽しんでいた...... 「姫様は、この花がなんと呼ばれているか知っていますか?」 知らないと少女はそくざにこたえる 「この花が咲くのには、百年かかるので、百年華と呼ばれています。そして、この花が咲いているということは、この場所が百年前も平和だったというなによりの証なんですよ。戦になれば土地は荒れ、花は育ちませんから......」 「それじゃあ、また百年後も、二百年後も咲いていて欲しいわね。だって、それはいつまでも平和だってことだものね」 「ええ、そうですね......」 青年は少女に微笑みかける 二人はいつまでもこの美しい世界が続くと信じていた...... しかし、百年後にこの花が咲くことはなかった......
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