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後ろからシュタインが頭の釘を上下させながら追って来た。ヴァンパイアがここ、と砂を固めたレンガでできた、屋根付きの小さな家を指差した。
「本当はね。ここに、ミイラさんが住むはずだったんだけど・・・・」
「メドゥーサは、あんな人目につきやすそうなテントは嫌だって、ここを陣どって動いてくれないんだ!」
キャッキャと赤ん坊のように騒ぐシュタインの頭をなでながらヴァンパイアは続けた。
「ほら、あいさつしてきて。僕らはそこで隠れて待ってるよ。」
「あたしだけで行くの!?」
もちろん、とヴァンパイアは首を縦に振った。そしてウィッチに背後を見せると、家の塀の裏で顔だけ見せて、親指を立てている。ウィッチは、はぁとため息をつくと、砂色のドアを叩いた。
「すみませーん。メドゥーサ・・・・ちゃーん!!」
声を張り上げたり、ドアを叩いたりしたが、返事はない。ヴァンパイアの方を振り返り、「いないよ」と手を顔の前で振って見せたが、ヴァンパイアはじっと見ているだけだった。
「あの・・・・その・・・・・ど・・・・・どう・・・・・・も・・・・・・」
「う、うああ!!」
いつの間にかドアが開いており、奥の暗がりに、深い赤の目が2つ光っている。ウィッチが叫ぶと目をつぶったのか、ふっと光が消え、また灯る。
「えーっと、えと、しゅ、シュバルツ・・・・・じゃなかった、ウィッチです。ヴァンパイアたちに、あいさつしておいでって言われて・・・・」
「新しい人・・・・?」
目がどんどん大きくなり、ウィッチの2mまえで止まると、姿が見えるようになった。深い緑の髪に、少し黄ばんだ白のローブ。胸元には雫のような形のルビーがきらめいている。足には黒いバレーシューズを履いており、どこをどう見ても、メドゥーサには見えない。不安げな顔をした、恥ずかしがり屋の女の子ではないか!
「そ、そう!ここって、女の子が少ないのね。おとッお友達になりたくて、きたのよ、そう。よ、よろしくね、メドゥーサちゃん。」
ウィッチは怖がらせないように、そっと右手を差し出した。メドゥーサはじっとその手を見つめると、ハッと我に返り、慌てて言った。
「・・・・よ、よろしくおねがいしま・・・す・・・・」
そして、ウィッチの手を握った。優しい力だけど、しっかり。やった、友達になれた。
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