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二人はゆっくりとおかしな世界を歩いた。
「他にも世界はあるのよ」
エレンはぽそりとそう呟いた。自ら話しかけるのが恥ずかしかったのだ。ウィッチはわざと大げさに乗っかった。
「そうなの?おかしな世界ね。でもこうしてまだ自分を保てるんだもの。絶対に生き返ってやるわ!ほかの世界ってどんなところ?私も行ける?」
エレンは驚きながらももじもじと話しだした。
「えっとね・・・・クリスマス・キャッスル・ネイションとか、バレンタイン・エンパイア・ネイション・・・・・とか。ここの世界と同じ感じ。もちろん、私たちも行けるの」
「クリスマスにバレンタインかぁ・・・・女の子の日ね!」
エレンはモジモジして微笑んだ。やっぱりエレンの笑顔は素敵だ。うっすら見えるそばかすもよく映えている。
「・・・・・私、そろそろ帰らなくちゃ。あんまり出歩きすぎると、私石になって動けなくなっちゃうの」
「あ、メドゥーサだから・・・・いいの!楽しかったわ、ありがとう。これ、お礼よ」
ウィッチはハットクリップからキラキラ光るハート型の宝石を掴みとり、エレンに手渡した。エレンは両頬を真っ赤にさせ、嬉しそうに両手で宝石を包むと何も言わずに微笑んで去っていった。
「さて、私も帰らなくちゃよね」
ウィッチは帰り道を歩き始めた。
ウィッチはヴァンパイアに押し込まれていた小さな家に着くと、パジャマ(タンスの中に入ってた。黒と赤のストライプ柄のパジャマだ)に着替え、ハンモックに飛び込んだ。
「・・・・ここは、日記が書けるのかしら?」
ウィッチは頭の中でまっ茶色のハードカバーノートを思い浮かべた。目を開けると、そのノートはウィッチの手の中に収まっていた。
「さすが、魔女さんね」
ウィッチは今日あった出来事を一ページ目にまとめ、両手でノートを胸に抱いた。ふと、母や親友に会えない悲しさに目を潤ませてしまったが、深い眠りに落ちてしまい、あとは何をしていたか考える体力もなくなっていた。
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