夢と現実

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「ことしももよろりくおねがいしぃまぁーす!」 そんな言葉を何回聞いたのだろう。 酔いも廻り気がつけば閉店の時間になっていた。 キララは完全に酔い潰れて、ソファーで寝ている。 そんなキララにどこから持ってきたのか毛布をかけるマスター。 残る客は、翔とお爺さんだけだった。 そのお爺さんもカウンターで酔い潰れている。 「あーぁ。またか…。」 そう呟くと、お爺さんの肩に手を当て、数回叩くマスター。 「社長!社長!閉店ですよ。起きてください!」 「んぁ…。ぁーマスター!今年はありがとよぉ。来年もよろしくなー。」 寝ぼけているのか、酔っているのか完全に今の状況を飲み込めない様子のお爺さん。 「社長!何言っているですかー?もう年は明けましたよー。帰りますよ!尾崎さんもう来ますからね。」 すると良いタイミングで入り口の扉が開いた。 「明けましておめでとうございます。社長、お迎えに上がりまおした。」 黒いスーツに身を包み、身の長は扉の上段に頭がぶつかる位だ。 「あぁ、尾崎さん。申し訳ありません。社長酔い潰れてしまって。」 「いえ…。いつもすいません。あとは私が代わりますので。」 そう言うと、尾崎は社長と呼ばれたお爺さんをヒョイっと担ぎ上げ、こちらに一礼をすると、扉から出たところでチラッと翔を見ると、軽く一礼をして去っていった。 (あれ?今あの人俺を見て笑った様に見えたけど…。気のせいか…) その背中を見届けたマスターは扉を閉め、翔の横に座った。 「はぁ。これでやっと僕も仕事納めだ。ごめんね翔くん。話があったんでしょ?」 煙草を口に加えて火を付けながら翔に問う。 「ぁ、いや、今日はもういいや。ちょっといろいろあったんだけどね。また話に来るよ。」 そう言うとマスターに向かって指を×にする。 「あれ?XYZがまだだけど?」 そう言うと煙草を灰皿に押し付け、カウンターの中へと向かう。 「はぁ。やっぱりマスターには敵わないや。」 その言葉を聞くと少しだけドヤ顔を見せるマスター。 XYZとはカクテルの一種だが、名前にアルファベットの最後の三文字が付くことから、最後に飲む物と言う意味がある。 マスターがシェイカーを振りグラスに注ぐ。 少しだけキザな翔は、いつもこの黄色く光る飲み物を頼んだあとにチェックしていたのだ。 「そういえばマスター。さっきのお爺さんは何の社長なの?」
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