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梨乃はまたつき出された粥を口に含むと、ゆっくりと咀嚼を繰り返す。
沖田は空になった茶碗と匙を置いて、梨乃の頭を撫でた。
「全部食べたね、いい子いい子」
「………子供じゃないんだから」
明らかに子供扱いした沖田の行動にムスッとした顔で頬を膨らませる梨乃。
…………そういうのが子供なんだ、というのは沖田は敢えて言わない。
「そうかな?僕より年下じゃない」
「ちゃんと元服終えたし!」
「まあ、髪上とか、初笄とか、それらしいことはしてないけどね」
「……だって歳三が……」
本来元服の際には髪上や初笄、裳着等をするのが正式なのだが、梨乃の元服の時には祝い酒を飲んだだけ。
というのも、男所帯でそんなことをしたら…と土方が裳着やら何やらを全て無しにしたからで。
それを梨乃は根に持っていた。
「良いじゃない、お酒飲めたんだし」
「私が飲めないこと、知ってるでしょ!?」
そう、梨乃は誰に似たのかは知らないが、下戸である。
梨乃に酒を飲ませたあかつきにはそれはもう大変な事になり、しかも本人は覚えていないというたちの悪いことこの上無い。
一度は局中法度の草案に「水原梨乃に酒を飲ませること許すまじ」と載った位だ。
「あはは!そうだっけ?じゃあ、今度島原行ってみんなでお酒飲もうか?」
「帰れ!!」
梨乃が真っ赤な顔で叫ぶと、沖田は笑いながら部屋を出て行った。
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