82人が本棚に入れています
本棚に追加
「だけどな、これは「仲間」として言うぞ。……お前は、女なんだよ。時には誰かに頼ったって、迷ったって、良いじゃねえか。」
「けれど……。」と梨乃は腰に差した大小二本の刀を見る。それは武士の証だ。
「私は刀を差してる限り、武士なんだ。女だろうが、それは世間では通用しないから……。」
「世間で通用しなくても、此処では通用する。」
原田の意外な答えに、梨乃は思わず原田の方を見る。その瞳は、慈愛に満ちていた。
「皆お前を大切に思ってる。山南さんも、近藤さんも、総司や斎藤、平助や新八、俺や山崎、………土方さんもな。」
「でも……!」
「土方さんだって、普段彼是五月蝿いのも、お前を心配してるからなんだよ。山南さんは、厳しいけど、誰よりもお前を優先している。」
だから、と原田は更に言葉を続けた。
「皆、支えてるんだよ。お前をな。」
その言葉に勇気付けられた梨乃は、今度は笑顔で言った。
「ありがとう。左之助。気が晴れた。」
「おうよ。お前は笑顔が良いぜ?」
ふざけたような原田の言い方に、梨乃はクスリと笑い、再び寝転がる。
「何で左之助は珍しく早起きなの?」
原田は眠そうに目を擦りながら言った。
「お前の悩んでそうな顔が夢に出てきて、目が覚めたんだよ。」
最初のコメントを投稿しよう!