方舟に乗るは

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「……は?」 出来るのかよ、という言葉を飲み込み、すっとんきょうな声を上げた土方。 だが近藤はいつになく笑顔で、彼の中ではもう決定らしい。 こうなれば近藤は引かないだろう。土方はゆるりとため息を吐いた。 「………好きにしてくれ」 ーーーー何故ここまで土方が渋るのかと言われれば、彼が伊東の入隊に反対だからだろう。 べつに人手が欲しくないとか、今さら新参者を隊に入れたくない、等では無く。 土方の野性の感が警鐘をならして五月蝿いのだ。 まるで、伊東を拒むかのように。 故に土方は伊東という人物を至極警戒している。いや、会った事もないのだが。 だが近藤の手前、土方がそんなことを言える筈も無く、胸の内にしまっておく事にしたのだ。 ーーーー全ては、近藤を信じている故に。 「…………伊東、か……」 何気なく呟いた土方の鼻先を、初秋の風が掠めていった。
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