方舟に乗るは

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茶は見事に長机にぶちまけられ、真ん前にいた梨乃は驚きのあまり固まっている。 「げほっ、げほっ……!」 「左ノ、汚ねぇことすんじゃねえ!俺の着物に掛かっちまったじゃねぇか!」 原田の吹いた茶が着物に掛かったのか、永倉は手拭いで頻りに着物を拭いている。 当の原田は咳き込みながら涙目で梨乃を見ると、苦しそうに言葉を紡いだ。 「おい、梨乃………お前……それ本気で言ってんのか…?」 「??何か駄目なの?」 原田の言葉の真意が分からず、梨乃は首を傾げる。 原田はあぁ、もう、と頭をがしがしと掻き、辺りを見渡した。 「??」 落ち着かない挙動にさらに疑問を抱く梨乃。何となく自分も辺りを見渡してみる。 だが危険な人物や物は見当たらない。 原田は漸く視線を梨乃に戻すと、小さな声で言った。 「………お前が余計な処突くと、お前まで山南さんみたいな扱いになるかも、だぜ…?良いのかよ…?」 その言葉に梨乃は下を俯く。 ーーーー正直な所、土方を怒らせない自信なんて無い。 しかも土方とは先月まで大喧嘩をしていて、最近漸く顔を合わせる様になった位だ。 下手をすれば、彼の地雷を踏んでしまうだろう。…土方の地雷は、あちこちにあるのだし。 大それた話では無いが、梨乃が全く不安を感じていないとは一概にも言えない。 だからこそ、原田の問いに言葉を詰まらせた。 「左ノ、あんまり梨乃ちゃんを困らせんなよ」 「いや、俺はただ……」
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