82人が本棚に入れています
本棚に追加
普段通りに振る舞っていた筈だ。別段不審な挙動は取っていない……多分。
しかも梨乃は昼間は任務、夜は隊士の市中見廻りの付き合い、と結構多忙な訳で。
土方とはあまり顔を合わせていないのだ。
なのに何故土方は梨乃の意図が分かったのか。
「言っちまえよ。…あんまり黙られると、俺も附に落ちねえんだよ」
「いや……」
言うべきか否か。梨乃は心の中で土方の機嫌を損ねない言葉を探す。
だがこの世の何処に土方を怒らせない言葉があるのだろうか。
いっそのこと容保公に接するかのように謙譲語でも使おうか。
……いや、そうなれば余計に土方を怒らせるだろう。
普通が一番。
梨乃は口を開いた。
「歳三はさ……山南さんの事……邪魔だと思ってるの?」
土方の目を見据えながら言う。土方は梨乃に目をくれる事もなく、猪口を傾けながら言った。
「邪魔者だ…?いつそんなこと言った?」
「邪魔だと思ってるから除け者にしようとしてるんでしょ!」
全く前後の繋がりの無い梨乃の言葉。はっきり言ってちぐはぐ。
土方は身に覚えがない上に更に自分が怒られる意味が分からず、不思議そうに眉間に皺を寄せる。
「……梨乃。お前何か勘違いしてねえか?」
最初のコメントを投稿しよう!