方舟に乗るは

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普段通りに振る舞っていた筈だ。別段不審な挙動は取っていない……多分。 しかも梨乃は昼間は任務、夜は隊士の市中見廻りの付き合い、と結構多忙な訳で。 土方とはあまり顔を合わせていないのだ。 なのに何故土方は梨乃の意図が分かったのか。 「言っちまえよ。…あんまり黙られると、俺も附に落ちねえんだよ」 「いや……」 言うべきか否か。梨乃は心の中で土方の機嫌を損ねない言葉を探す。 だがこの世の何処に土方を怒らせない言葉があるのだろうか。 いっそのこと容保公に接するかのように謙譲語でも使おうか。 ……いや、そうなれば余計に土方を怒らせるだろう。 普通が一番。 梨乃は口を開いた。 「歳三はさ……山南さんの事……邪魔だと思ってるの?」 土方の目を見据えながら言う。土方は梨乃に目をくれる事もなく、猪口を傾けながら言った。 「邪魔者だ…?いつそんなこと言った?」 「邪魔だと思ってるから除け者にしようとしてるんでしょ!」 全く前後の繋がりの無い梨乃の言葉。はっきり言ってちぐはぐ。 土方は身に覚えがない上に更に自分が怒られる意味が分からず、不思議そうに眉間に皺を寄せる。 「……梨乃。お前何か勘違いしてねえか?」
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