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「総司ぃぃぃぃ!待ちやがれ!」
「待てと言われて待つ人何て、居ませんよ!」
大の大人二人がおいかけっこをしている。
鬼の様な形相で追いかけるのは、新選組副長の土方歳三。「鬼の副長」という異名をもつ男だ。もっとも、今彼はまさに「鬼」と化している。
対して涼しい顔で逃げ回るのは、新選組一番組組長の沖田総司。飄々とした性格の彼は、まるでこの追いかけっこを楽しんでいるようだ。
そんな対照的な二人が追いかけっこをしている理由は、沖田の手の中にある。
「白牡丹~月夜月夜に「やめろ!」んもー、いいところで邪魔する~。」
先程から、沖田が叫んでいる、お世辞にも上手いと言えない俳句は、土方が何年もかかって書き溜めてきた句である。無論、皆には内緒で。
「土方さんって、余り句の才能無いですよね~。」
「てんめぇ……。返しやがれ!」
「嫌ですよ、こんな面白い俳句。ええっと、次は……。」
「やめろ!」
二人の追いかけっこは、夕方まで続いたのである。
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