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土方は状況が理解出来ないらしく、何度も瞬きをしている。
「お、おい、近藤さん…。こりゃあ、どういう事だ……?」
土方は訝しげに近藤の胸で泣いている梨乃を見る。近藤は父親さながら、梨乃の背中を優しく擦りながら土方に言った。
「ん?いや、今梨乃君と父娘として親睦を深めていたのだ!」
「お、父娘だあ?……おい、原田。てめえも貰い泣きしてる暇があったら、説明しやがれ!」
土方に頭を叩かれた原田は、涙で潤んだ瞳を土方に向ける。土方はゾッとし、思わず後退りした。
「お、俺は男色じゃねえからな、原田……。」
「??なにがだよ、土方さん?」
原田は何故土方が後退りしたのか分からないらしく、首を傾げた。
「それよりどうなってんだよ、これは。」
ああ、と原田は手を叩くと、説明を始めた。
「なんか近藤さんと梨乃の絆が深まって、父娘みたいにしよう、的な展開になったんだよ。」
「はああ!?」
土方は重要な部分を絞りすぎた原田の説明を聞いて、頭をがしがしと掻く。近藤は二人の会話など聞いちゃいないようで、相変わらず梨乃の背中を擦り続けている。
「んまあ、これで梨乃の悩みも解消、近藤さんも娘が出来て良かった良かったって事で、いいんじゃないか?」
「……。そんなこと誰も聞いてねえよ。原田、お前、飯当番だろ。斎藤が苛々しながら勝手場で待ってるぞ。行ってこい。」
原田の顔からサアッと血の気が引く。「斎藤が苛々しながら勝手場で待ってるぞ。」に反応したのだろう。
「早く言ってくれよ!土方さん!」
原田は慌てて部屋を出ていった。土方ははあ、と溜め息をついて座る。
「……近藤さん、何があったんだ?」
「ん?歳なら大丈夫だろう。実はな、梨乃君と心が通じあって、父娘になったのだ!」
「意味わかんねえよ。梨乃、お前から説明しろ。」
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