時は夢にて

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「それで、どういう事ですか……?」 「ごめんなさい…。」 「……すまん。」 土方と沖田の正座姿の前に座っているのは、新選組総長の山南敬助。黒い笑顔を纏い、背中には般若さえ見える。 「全く、新選組の幹部二人、しかも一人は大幹部。それなのに、追いかけっこなんて……。どういう事ですか…?ねえ、沖田君。」 「さ、山南さん。と、取り敢えず後ろの般若しまって下さいよ……。」 沖田の願いも虚しく、山南は黒い笑みに青筋までもたて始める。土方は思わず正座のまま後退りをした。 「土方君。君は副長でありながら屯所を走り回る等、随分隊士に示しがつかない事をするのですねえ…。」 土方の肩が跳ね上がる。しどろもどろになりながら、土方は言い訳染みた言葉を紡いだ。 「そ、そりゃあ副長だって人間だから、走り回りもするだろ!?」 「屯所を走るな、と隊士達に怒鳴っていたのは誰でしたっけ?土方君。」 「……俺だ。」
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