ベビー誕生

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ベビー誕生

アカサタ! 1960年11月16日、03時24分、晴天、アメリカ・フィラデルフィア、12階建のペンシルベニア州立アレルヤ病院、キリスト教プロテスタント系。 3階の分娩室でアフリカ系初産婦ハル・シンプハン21歳が、全開の陣痛に耐えている真っ只中、彫像のように整った顔を赤らめ、身体からは玉のような汗が滴る。 「う~んう~~」 一層大きないきみ声が響き、スッポーン。 「オギャー。」 誕生3時25分、母譲りの褐色の肌で男の子だ。 しかし、ベビーは目が異様に大きく、臍と髪の毛や眉が無く、手足に水掻き、それに後頭部からライオンの尻尾のような器官が蠢いており、耳朶は首筋にまで伸びと色々有り、異形なのである。 「ドクターを呼んで!」(英語で喋ってる、以下同様) ぽっちゃりとした唇をキリリと結び、ベビーへの射すような視線で柔和な顔を曇らせた、ナース長メイ・コナーズ43歳に促され、つり目で唇の薄いインターンのホッカ・イドー21歳がかっ飛んだ。 異変を察知したハルが、まだ痛みの残る身体を分娩台から起こして様子を見ようとしたら、コナーズに遮られ見えない。 気力を振り絞って台から降り、コナーズを押しのけてベビーを見た。 「オーマイガッ、ノー、マイベビー!」 イドーに呼ばれた日本人ドクター、心なしか坂本竜馬に似ている杉山宗太26歳が、その脅威の現場に駆けつけた。
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