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ハルの悲鳴が何度も分娩室に響いた。
ドクター杉山が口火を切った。
「お母さん落ち着いて!うむ、後頭部と腹部・手足特異、後産無し、他は良好。」
立ち会った皆が震撼しのっぴきならないその中で、ドクター杉山の冷静で機敏な診断は安堵を呼び起こす。
「産湯使ってやってからスコアだ!」
的確な指示に、スタッフはキビキビと立ち働く。
産湯につけて貰ってベビーはとりあえず御機嫌になり、泣き止んだ。
「お母さん、抱っこしてやって、ほら。」
タオルにくるまれたベビーがハルに渡される。
ハルはベビーを抱擁して話しかけた。
「初めましてベビー、ママよ、一体どうしたの、こんな身体に生まれて、お~よしよし、解るかな~ママよ~わあ、男の子ね、ショーンよショーン。」
心なしかベビーは喜んで頷いているかのようだ。
黒目がちな目をキョロキョロと動かした。
「お母さん失礼します、スコアがあるので。」
ベビーはハルから離され、検診台に寝かしつけられた。
ハルはスタッフの対応に不審して、ドクター杉山にすがりついた。
「マイベビーを死なせたりしないで、御願いします。」
「勿論です、ご安心下さい。」
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