ベビー誕生

3/21
前へ
/261ページ
次へ
落ち着きを取り戻した分娩室では、スタッフによりベビーのデータが測られた。 3210㌘、51㌢、アタマのシッポは8㌢etc。 ドクター杉山の次なる指示で、ハルは大部屋301号室、ベビーは清潔な産着にくるまれ新生児室へ。 ドクター杉山はコナーズに何やらヒソヒソ耳打ちをした。 病室ではハルは疲弊した身を横たえたまま、そこへコナーズが慰めを掛ける。 「絶望程では無いですよ、鬼の角ではないし、普通の御子様と変わりなく健康に生きますよ、きっと。」 「ありがとうございます、それにしても今後の事…」 「ドクターが最善を尽くし責務を果たすと。」 「お任せ致します、あの子の父にも同じように伝えていただけますか。」 「かしこまりました。」 父親クルマート・シンプハン22歳は、日の出と共にやって来て診察室に通された。 ベビーとのご対面では、誠実そうな顔に妙な笑顔しか浮かばなかった。 クルマートを激励するドクター杉山の柔和で気概のこもった声がする。 「ベビーは現状では内臓に何の疾患も無く、ひょっとしたら奇形ではなく進化体だと察していいかも。そうするとより悩んでいる場合じゃない。」 しかしクルマートは落胆し、あたかも雷雨に打たれる子犬のように憔悴した。
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加