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落ち着きを取り戻した分娩室では、スタッフによりベビーのデータが測られた。
3210㌘、51㌢、アタマのシッポは8㌢etc。
ドクター杉山の次なる指示で、ハルは大部屋301号室、ベビーは清潔な産着にくるまれ新生児室へ。
ドクター杉山はコナーズに何やらヒソヒソ耳打ちをした。
病室ではハルは疲弊した身を横たえたまま、そこへコナーズが慰めを掛ける。
「絶望程では無いですよ、鬼の角ではないし、普通の御子様と変わりなく健康に生きますよ、きっと。」
「ありがとうございます、それにしても今後の事…」
「ドクターが最善を尽くし責務を果たすと。」
「お任せ致します、あの子の父にも同じように伝えていただけますか。」
「かしこまりました。」
父親クルマート・シンプハン22歳は、日の出と共にやって来て診察室に通された。
ベビーとのご対面では、誠実そうな顔に妙な笑顔しか浮かばなかった。
クルマートを激励するドクター杉山の柔和で気概のこもった声がする。
「ベビーは現状では内臓に何の疾患も無く、ひょっとしたら奇形ではなく進化体だと察していいかも。そうするとより悩んでいる場合じゃない。」
しかしクルマートは落胆し、あたかも雷雨に打たれる子犬のように憔悴した。
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