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永井 悠人は小学校からの幼馴染みで母親同士が友達ということもあり寝ても起きてもいつも一緒に過ごしてきた。
笑ったり喧嘩をしたり、悪さをしては二人で怒られ、中学ではろくに勉強もせずにサッカーに夢中になった。
そんな俺達に異変が起きたのは中学3年の夏だった。引退試合を控え練習に打ち込む悠人の体はすでに病気に犯されていた。
「俺の病気……難病なんやって。治らんって言われたよ」
「は?嘘やろ?難病ってなんなん?何処の医者なん、んなこと言ってんの!」
「落ち着けよ光樹……
もう何件も行ったんや、東京なんかの大学病院なんかでも、同じ事……言われたんよ」
力なく話す悠人は山あいに沈む夕陽を眺めながらふっと笑った。
頭が真っ白になった俺は悠人にかける言葉もなく、ただただ隣に座る悠人の横顔を眺めることしかできなかった。
頬をすり抜ける風は少し肌寒くて、西の空を赤く染める夕焼けが悲しげに微笑む悠人を照らし続けていた。
その後、悠人は入退院を繰り返すようになっていった。
そんな悠人を毎日のように見舞いに行き、時には学校をさぼり何時間も悠人の傍で時間を潰した。
悠人に遠慮してたのもある。ベッドの上で先の見えない治療を強いられる悠人に悪くて学校生活を楽しんではいけないような気がしてた。
そうして、悠人を言い訳にサッカーも学校にも足を遠退かせていた頃だった。
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