X'masの約束

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病院を出た俺達はクリスマスイベントで賑わう街の広場へと向かった。 「ここって?」 「あぁ……覚えてる?前にも二人で見に来たよな?」 広場の中心に据えられたシンボルツリーには色とりどりのイルミネーションで彩られ光り輝いていた。 その脇にはトナカイやサンタクロースを模ったモニュメントや光の噴水を演出する幻想的な空間が広がっている。 「覚えてる?ここでおまえが言ってた事?」 俺の問いかけに悠人は答える事も無く、イルミネーションを見つめたままだった。 「言ってたやろ?『自分が作った作品で人を笑顔にしたい。心の中でも光り輝くような作品を作りたい』ってさ」 「そんなこと……もう、忘れた」 不機嫌そうな顔の悠人を横目に俺は続けた。 「俺、イルミネーションデザイナーになる為に、それ専門のデザイン事務所に就職したんよ」 「光樹、おまえ?」 「ぴったりやろ、俺の名前『光る樹』やしさ」 「何言ってるんよ?おまえにやってちゃんと夢があるやろ?」 「俺の夢はお前の夢叶えること。もう決めたんや、あの日お前に怒鳴られて…… 情けないけど、怒鳴られてやっと目が覚めてな」 「……」 「別に悠人の為だけやないし。実は俺、あれから毎年ここに来ててな、イルミネーションを眺める人たちを見てたんよ。みんないい顔するんよね。瞳をキラキラ輝かせてさ」 「……」 「いつやったか、このシンボルツリーに手を合わせて、なんか願い事をする人見かけたてな。じっと目を閉じたまま手を合わせてる姿見て思ったんよね。俺もこんな仕事がしたいなって……」 黙り込んだままの悠人はシンボルツリーを見つめながら一つ大きく息を吐き出した。 「悔しいけど譲るわ…… そやけど、一人前になってお前が作った作品見るまでは俺は認めんからな。泣きっ面抱えて戻ってくんなよ?」 「わかってる、きっといい作品作ってお前に見せるから」 「後、12年しかないんや…… 最初に聞いたんよ俺…… この病気の平均寿命は何歳ですかって?そしたらな……発病して15年だってはっきり言われたんよ。だから、後12年。 俺待ってるから、お前の作品楽しみにしてるから」 辛い話のはずなのに、やけにすがすがしい微笑みを浮かべた悠人がすっと俺の前に手を差し出した。 差し出された右手を強く握り返し、俺たちは堅い約束を交わした。
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