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12月23日、会社でのすべての仕事を終えた俺は、午前中に機材一式を車に詰め込み午後には悠人が待つ地元へ向かった。
運転しながら、悠人がリモコンの点灯スイッチを入れる瞬間を何度も思い浮かべてみる。
『絆を包み込む希望の光』をテーマにしたイルミネーション。
キラキラと光輝くイルミネーションを見る悠人は、どんな顔をするだろう。少しは誉めてもらえるだろうか……
なんて、がらにもなく考えながら作り上げたデザインだった。
午後9時を少し過ぎた頃に病院へと到着し、病室のドアを開けた俺は愕然とした。
規則的な機械音を放つ装置から何本もの管が悠人の身体へと伸びている。
「光ちゃん!」
悠人のお袋さんが呆然とする俺に声をかけてきた。
「おばちゃん、何これ?どういうこと?悠人、どうしたん?」
「光ちゃん……ごめんなぁ、連絡もせんで」
悠人のお袋さんの声が震えている。ベッドの上の悠人がまるで別人のように見えてくる。
「実は海外で開発された新薬の治験をしたんよ」
「治験?なんでそんな事したん?」
「あたしは反対したけど、悠人が望んだんよ。成功例があるから大丈夫やって……
失敗したら、昏睡状態のまま目を覚まさんらしいけど、挑戦したいって言い張ってね」
悲しげな声と憔悴しきったお袋さんは眠ったままの悠人のおでこをそっと撫でていた。
「でもな、あたしも悠人も後悔はないんよ。そやからなんも遠慮いらん。光ちゃんは光ちゃんの道を歩かないかんよ」
お袋さんの涙声が心に突き刺さった。俺の道、悠人との約束。あの日の光景が目に浮かんだ。
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